TCFD提言に沿った情報開示

Disclosure Based on TCFD Recommendations

ガバナンス

経営会議直轄の「サステナビリティ委員会」において、当社の環境課題に対する実行計画策定、進捗のモニタリングを実施しています。

サステナビリティ委員会は、専務執行役員経営統轄本部長が委員長を務め、社内監査役が常時陪席しています。委員会における協議事項は経営会議にて決定・承認すると共に、定期的に取締役会へ報告することで取締役会の監督が適切に行われる体制を整備しています。

2023年度は委員会を11回開催し、経営会議に10回上程・報告し、取締役会/取締役説明会に7回報告しました。

戦略

「サステナビリティ委員会」において国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、パリ協定の目標である1.5℃シナリオと4℃シナリオを想定し当社の事業及び財務に及ぼす影響を分析し、対応策を検討しています。

特定されたリスク、機会は今後の経営戦略に反映するとともに、今後の環境変化に応じて定期的に分析・見直ししていきます。

参照した既存シナリオ

シナリオ 機関
4℃
シナリオ
RCP8.5

Representative Concentration Pathways 8.5

IPCC1
1.5℃
シナリオ
SDS

Sustainable Development Scenario

IEA2
NZE2050

Net Zero Emissions by 2050 Scenario

  • 1:Intergovernmental Panel on Climate Change (国連気候変動に関する政府間パネル)
  • 2:International Energy Agency (国際エネルギー機関)

特定された気候関連リスク/機会と当社の事業及び財務に及ぼす影響

定性的な財務インパクト

大分類 カテゴリ 区分 ドライバー 事業インパクト 定性情報 影響度
4℃ 1.5℃
リスク 移行リスク 政策/法整備 カーボンプライスの導入 炭素税導入等によるオペレーションコスト、調達コストの増加 炭素税等、温室効果ガス排出を抑制する政策/法規制導入によりオペレーションコストが増加。サプライチェーンも同様に操業コストが増加し調達コストの増加に起因
エネルギーミックスの変化 排出係数の低い設備(再エネ/新エネ/次世代エネ)の発電割合増加による電力料金の変化、生産コストの増加 電力料金値上げにより操業コストが増加。サプライチェーンも同様にオペレーションコストが増加し調達コストの増加に起因
環境指標の開示義務化 GHG排出量等、環境関連指標の開示義務拡大に伴うオペレーションコスト増加 開示義務に対応するオペレーションコストが増加。開示対応不備による罰則や企業評価低下のリスクも増加
プラスチック規制の強化 包装資材、物流資材、商品/附属品の見直し伴うコストの増加 プラスチック規制強化に伴い、素材の見直しによるコスト増加の可能性があるが、当社は先行して対応中につき影響は軽微の見込み
テクノロジー 環境負荷の低い新技術開発 新技術への対応に伴う調達コストの増加 再生繊維等の環境負荷の低い新素材や技術が普及、当社も対応を求められることにより調達コストが増加。サステナブル素材は一部ブランドで導入済も、一斉切替に伴う影響度は高い
市場 既製品・リアル店舗市場の縮小 消費者変化に伴う既製品売上、実店舗売上の縮小 消費者意識の変化に伴う衣料品既製品市場の縮小、行動変化に伴う実店舗売上の縮小等、コロナ禍も含め既に一定程度の市場変化が進行中
評判 ESG投資家の増加 ESGへの取り組み不足による投資撤退/投資額減額 環境配慮型商品/サービスへの対応の遅れにより投資家の撤退リスクが増加。資金調達にも影響が出る可能性あり
顧客、社会からの評判 SNS普及、消費者の環境意識の高まりに伴う企業姿勢、商品についての評判への対応のためのコスト増加 サステナブル素材使用拡大、工場監査強化等により製造コストが増加。企業としての取組の拡大と並行して、従来以上の情報開示の必要性
物理リスク 急性的 台風、洪水等の自然災害の重大性・頻度の上昇(大雨/台風/洪水/水不足等) 自然災害による店舗休業日数の拡大、生産設備/物流設備の被災に伴う操業停止/稼働低下の拡大 気候変動に起因する自然災害の増加や感染症リスク拡大による店舗への損害、休業日の増加。売上の減少、修繕コストの上昇に起因
慢性的 平均気温、海水温、海水面の上昇 疾病リスク(熱中症、感染症等)増加に伴う店舗販売機会の喪失、気温上昇に伴う重衣料販売機会の喪失 気温上昇に伴い当社の主力販路、主力商材(アウター)の販売機会が縮小、利益率の低下により利益を押し下げ
機会 機会 資源効率 生産・流通プロセスの効率化 リサイクル技術普及による循環型商品の開発、二次流通販路の拡大による廃棄削減 技術の普及に伴い対応が求められる循環型商品の調達コストが低下。仕入圧縮や製品廃棄削減により企業価値向上、投資拡大の機会もあり
製品/サービス 新たな機能素材や環境配慮型素材の普及による新たな商品群開発、売上拡大 再生素材等の低炭素素材普及による新たな商品群を開発、消費者嗜好の変化にも対応した新たな市場開拓による売上拡大の機会。 技術の普及に伴い対応が求められる循環型商品の調達コストが低下。仕入圧縮や製品廃棄削減により企業価値向上、投資拡大の機会もあり
新市場 サステナブルブランド市場の拡大 エコアルフ事業拡大、ブランド横断でのサステナブル商材開発による売上増加 消費者意識の高まりに伴いサステナブルブランドの売上が拡大。エコアルフのサブライセンス取引開始等、事業ポートフォリオの再構築と経営資源の集中により収益力向上の機会あり
夏物衣料市場の拡大 温暖化により夏物市場が拡大、機能素材の普及により調達コストも低下 平均気温上昇に伴い消費者嗜好が変化、夏物衣料に新機能/デザイン等の提案機会が増加。機能素材の普及により調達コスト低下も見込める

リスク管理

「サステナビリティ委員会」を通じて気候関連リスクについて定期的に分析、実行計画を策定し、経営会議、取締役会に報告しています。

自然災害に起因する物理リスク(急性リスク)への対応については、代表取締役社長直轄の危機管理委員会においてBCP策定をはじめとする事業継続マネジメントを実行する体制を整備しています。

当社のリスク管理体制

指標と目標

GHG排出量削減目標

中期目標 長期目標
Scope1・2 具体的な削減目標 削減に向けた主な取り組み Scope1・2を2050年までにネットゼロ
2030年度までに19年比50%削減
(▲1,100t)
  • 2030年までに自社ビルをCO2排出ゼロの電力会社に変更
  • 自社ビルのLED照明導入
Scope3 2030年度までに19年比30%削減
(▲34,700t)
  • 無駄な生産を行わない仕入の適正化、消化率の改善
  • 原材料調達において全生産数量の30%を環境配慮型素材へ段階的に置き換えることにより、1着当たりGHG年間排出量を削減
  • サプライチェーン全体での排出量削減に向けた取り組み

GHG排出量実績:過去実績推移

サプライチェーン排出量の推移

単位:t
Scope Category 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
Scope1 事業者自らによる
GHG直接排出
879 738 819 594 556 432 296 310 304 339
Scope2 電気、熱・蒸気の
使用に伴う間接排出
3,103 4,419 3,872 3,065 2,220 2,135 1,906 1,418 1,243 1,321
Scope3 カテゴリ1
購入した製品・サービス
182,788 164,937 144,561 113,984 93,057 105,320 99,528 64,470 59,222 67,822
カテゴリ2
資本財
1,807 2,231 3,225 4,211 3,451 5,193 7,796 1,912 538 1,234
カテゴリ3
Scorp1.2以外の燃料
及びエネルギー活動
1,189 1,060 1,037 814 750 637 533 472 476 490
カテゴリ4
輸送、配送(上流)
2,126 1,911 1,675 1,321 1,080 1,227 1,159 750 691 790
カテゴリ5
事業所から出る廃棄物
28 28 22 26 18 29 29 23 23 26
カテゴリ6
出張
729 730 708 668 545 507 476 439 367 342
カテゴリ7
雇用者の通勤
2,275 2,156 2,046 1,878 1,529 1,393 1,318 1,184 990 953
カテゴリ8
リース資産(上流)
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
カテゴリ9
輸送、配送(下流)
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
カテゴリ10
販売した製品の加工
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
カテゴリ11
販売した製品の使用
6,571 5,908 5,178 4,084 3,337 3,793 3,582 2,317 2,134 2,441
カテゴリ12
販売した製品の廃棄
2,319 2,085 1,828 1,441 1,178 1,339 1,264 818 753 861
カテゴリ13
リース資産(下流)
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
カテゴリ14
フランチャイズ
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
カテゴリ15
投資
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
合計 199,833 181,046 160,280 128,427 104,944 119,437 115,684 72,385 65,194 74,959
総合計 203,814 186,203 164,971 132,087 107,721 122,004 117,886 74,114 66,741 76,618
前年比 98% 91% 89% 80% 82% 113% 97% 63% 90% 115%
  • Scope3カテゴリ5「事業所から出る廃棄物」を2013年より再計算し修正しました

GHG排出量実績:サプライチェーン排出量算出方法

参考)2022年実績

Scope Category 種類 原単位 実績 単位 CO2排出量 備考
Scope1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出 都市ガス 燃料使用あたり
2.234 t-CO2/千㎥
123 千㎥ 275 *1
LPG 燃料使用あたり
2.999 t-CO2/t
20 t 60 *1
灯油 燃料使用あたり
2.490 t-CO2/㎘
0 0 *1
ガソリン 燃料使用あたり
2.322 t-CO2/㎘
1 3 *1
Scope2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出 電気、
熱・蒸気
温対法算定・報告・公表制度における排出係数及び電気事業者別排出係数 1,321 *2
Scope3 カテゴリ1
購入した製品・サービス
製品 着数あたり
0.024 t-CO2/枚
2,815,309 67,124 *3
(25.5㎏×0.935)
紙製
ショッパー
購入者価格あたり
3.965 t-CO2/百万円
93 百万円 369 *1
その他の紙製容器
プラ製
ショッパー
購入者価格あたり
4.005 t-CO2/百万円
1 百万円 2 *1
プラスチック製品
ポリ製
ショッパー
購入者価格あたり
9.752 t-CO2/百万円
28 百万円 270 *1
合成繊維
上水道・簡易水道 購入者価格あたり
1.502 t-CO2/百万円
4 百万円 6 *1
下水道 購入者価格あたり
12.274 t-CO2/百万円
2 百万円 22 *1
損害保険 購入者価格あたり
0.726 t-CO2/百万円
39 百万円 29 *1
カテゴリ2
資本財
設備投資額 資本財価格あたり
2.924 t-CO2/百万円
422 百万円 1,234 *1
カテゴリ3
Scope1.2に含まれない燃料及びエネルギー活動
電力 エネルギー量あたり
0.068 t-CO2/千kWh
3,587 千kWh 245 *1
蒸気 エネルギー量あたり
0.033 t-CO2/GJ
7,461 GJ 244 *1
ガソリン 燃料使用あたり
0.557 t-CO2/㎘
1 1 *4
カテゴリ4
輸送、配送(上流)
製品輸送 着数あたり
0.000 t-CO2/枚
2,815,309 790 *3
(25.5㎏×0.011)
カテゴリ5
事業所から出る廃棄物
一般ごみ
(燃焼)
廃棄物重量あたり
1.336 t-CO2/t
5 t 6 *1 *4
紙くず
(燃焼)
廃棄物重量あたり
0.250 t-CO2/t
42 t 11 *1 *4
紙くず
(リサイクル)
廃棄物重量あたり
0.021 t-CO2/t
17 t 0 *1
ガラス
(リサイクル)
廃棄物重量あたり
0.010 t-CO2/t
0 t 0 *1
金属
(リサイクル)
廃棄物重量あたり
0.009 t-CO2/t
7 t 0 *1
プラ
(リサイクル)
廃棄物重量あたり
0.149 t-CO2/t
7 t 1 *1
その他
(リサイクル)
廃棄物重量あたり
0.149 t-CO2/t
49 t 7 *1
カテゴリ6
出張
従業員数 従業員あたり
0.130 t-CO2/人・年
2,626 342 *1
カテゴリ7
雇用者の通勤
通勤交通費 交通費支給額あたり
1.854 t-CO2/百万円
514 百万円 953 *1
カテゴリ8
リース資産(上流)
Scope1.2に含む
カテゴリ9
輸送、配送(下流)
今回算定対象外
カテゴリ10
販売した製品の加工
今回算定対象外
カテゴリ11
販売した製品の使用
クリーニング 着数あたり
0.000867 t-CO2/枚
2,815,309 2,441 *3
(25.5㎏×0.034)
カテゴリ12
販売した製品の廃棄
製品廃棄 着数あたり
0.000306 t-CO2/枚
2,815,309 861 *3
(25.5㎏×0.012)
カテゴリ13
リース資産(下流)
今回算定対象外
カテゴリ14
フランチャイズ
今回算定対象外
カテゴリ15
投資
今回算定対象外
合計 76,618 t-CO2
  • サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.3)
  • 2023年7月 関東経済産業局提出予定「省エネ法定期報告書(2022年度)」より、Scope1の「都市ガス」「LPG」「灯油」を除く
  • 環境省令和2年度ファッションと環境に関する調査業務-「ファッションと環境」調査結果- 株式会社日本総合研究所作成
    「国内に供給されている衣類のライフサイクルにわたるCO2排出量は服1着生産するにあたり排出されるCO2は25.5キログラムと推計」
    なお、*3 合計不足分(0.008)は店舗に係るCO2排出量で、Scope1及びScope2に含まれる
  • LCIデータベースIDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)